山鹿市菊鹿町相良(あいら)地区には、子受け、安産、縁結びにご利益があるとして多くの参拝者が訪れる「相良寺」があります。また、本堂に鎮座される「相良観音」は、木造千手観音坐像としては日本最大級とされています。
　参道にある「泉水園(せんすいえん)」では、地元で採れた野菜や果物、自家製の漬物、「栗まんじゅう」や「栗だんご」をはじめ、手作りの加工品、お土産などがずらりと並ぶ人気のお土産店です。
　その中でも昔ながらの製法で一枚一枚、丁寧に造る「手焼き煎餅」は、お店の看板商品のひとつ。味わいの決め手となる卵には、山鹿産の新鮮な卵を使用し、さらに小麦粉と砂糖は国産素材を厳選。シンプルだからこそ特に素材選びを大切にしています。
　卵をふんだんに使っているので、しっとりとした食感で、とても風味が良いのが特徴。どこか懐かしく、優しい味わいに多くのファンがいます。
　霊験あらたかな相良寺に参拝した後に、このお店に立ち寄り、そして名物煎餅をお土産に買って帰られる。県外からのリピーターも後を絶たないというこの「手焼き煎餅」は、その後のお取り寄せの問い合わせも多い人気商品なのです。

　「思ったよりも大変でした」柔らかな口調で話すのは、この「手焼き煎餅」を作る猿渡貴幸さん。以前は大分県の湯布院にあるホテルで、料理人として順風満帆に仕事をしていましたが、平成28年4月の熊本地震をきっかけに帰省。
　熊本地震によりお店が一部損傷し、客足も遠のいていた状況から、どのように乗り越えるか、貴幸さんは家族の想いを受け、後を継ぐことを心に決めました。
　「物心ついた頃から、いつもお店を手伝っていたので、後を継ぐことは子どもの頃から考えていました」と、将来を見据えながらこれまで歩んできたため、家業を継ぐことへの抵抗はそこまでなかったそうです。そして、派手なことはせずに、素材にこだわり、手作りでおいしいものをお客様に提供するというお店の方針を、家族でこれからも続けていくことに。
　それから地道に昔ながらの製法で、より一層素材にこだわり、「手焼き煎餅」を作っています。
　「お客様から『美味しかった』と言ってもらえることが何よりのやり甲斐。今の仕事はとても楽しい」と、貴幸さんは、お店を担う若い後継者として目を輝かせます。

　「手焼き煎餅」を作っているときは、どこからともなくいい香りが漂ってきます。お店近くのこぢんまりした作業場には、焼きたての甘い香りが充満しています。
　そこでは、高温の機械と対面し、黙々と手焼き作業が行われています。生地を流し込み、相良寺と「相良観音」の文字を焼印し、形を整え、袋に詰める。全てが手作業です。丸1日掛けて、約3000枚を焼き上げます。
　わずかな焼き色の違いも目で確認し、1枚ずつ袋に詰めます。このような手間暇掛けた丁寧な作業が、多くの人に愛されるこの煎餅のおいしさの秘訣なのでしょう。
　「泉水園のおもてなしは、この手作りの商品です。家族で、おいしいと言っていただけるように、一生懸命作っています」と貴幸さん。
　この最高のおもてなしがギュッと詰まった手焼き煎餅。
　山鹿のパワースポット「相良寺」の参道で作られる、風味豊かな「手焼き煎餅」。そして、同じ生地に炒ったピーナッツがたっぷり入った香ばしい「ピーナッツ煎餅」。心の込もった2種類の味わいをご家庭でもお楽しみいただけます。